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Essay Japanese only |
File 004 : Italian Job/「イタリア製」ミニ
ぼくの不注意で1台目の愛車であった初代ゴルフEを壊してしまったあと、すぐに2台目探しが 始まりました。しかし依然学生の身、バイト代をためたわずかなお金しかありません。しかし 好きなクルマはいろいろとありました。前にもお話したようにこのころすでにベスパ125ET-3を 持ち、西風のGTロマンを愛読し、素晴らしきイタリア車の世界に傾倒し、ふるいクルマを愛して いたぼくとしては、少ない予算ながら納得のいくものを探していたのです。 同じ頃、ぼくはミニ・フリークというミニの専門誌も愛読していました。イタリア車のみでなく、ミニ やエラン、バンプラにEタイプといった英国車も大好きでした(何たって、ビートルズと同じ「大英 帝国」製ですからね!) ある日、ふと中古車雑誌を調べていたら、ぼくの予算に合いそうなミニが現れました。左ハンドル で、70年代初期モノのようですがとにかく予算には合っていました。というか、好きなクルマで予 算に合うものがこれしかなかった、というのが正しいかもしれません。何はさておき学校が終わっ たあとにクルマを見に行くことにしました。 そのお店はよくある町外れの小さな中古車屋さんでした。社長とメカニックのおじさん二人でやっ ているお店で、他にどんなクルマがあったかは忘れましたが安い小さな中古外車を売っている お店でした。事前に電話をして在庫を確認していたので(コレは大事です!ぼくは「もう売れまし た」といわれるのではないかとドキドキしました。実はこのミニを見に行く前に見つけた別のミニ は「売れました」と言われちゃっていたのです)、お店のおじさんはエンジンをかけて待ってくれて いました。 早速試乗です。とはいえ、このときが初めての「左ハンドルMT」です。しかもクルマはあこがれの ミニ!ぼくはすっかり舞い上がっていて、これを運転できた楽しさと、これがぼくのクルマになる のかと思うと嬉しくてチェックどころではありませんでした。旧型ミニ独特の小さな、しかしホールド の良いシートは身長178cmのぼくが乗っても、天井との間にこぶし一つ分のスペースがありま した(後年当時の新車のミニに乗る機会もありましたが、新型シートは立派になって大きく、室内 が狭くなっていてガッカリしました)さらに旧型ミニの定番である「センターメーター」はこのモデル では標準装備で、「トラックのよう」と揶揄されるポジションの高いハンドルと相まって、雑誌で読 んだミニの世界にすっかり陶酔してしまいました。さらにこのハンドルがモトリタのウッドだったこ とも納得するのに十分でした。 さらにこの個体がぼくを感激させたのは、「イタリア製」だった、ということです。イタリアのイノ チェンティという会社はランブレッタというスクーターで有名ですが、60〜70年代にかけて英車 であるミニをイタリアでノックダウン生産していました。当時日本にもイタリア製唯一の「7連メー ター」を備えたクーパーが多く輸入されたようです。本国イギリスがクーパーの生産を終了した 70年代に入ってもこのイタリア製クーパーは生産されていたためと思われます。 イタリア製なので、センターメーターの中のガソリンメーターの表示も「Benzina」(イタリア語で ガソリンの意)などと表示してありましたし、イタリア製ミニだけが「三角窓」を装備していました。 こうして迷う余地もなく、ぼくはこの「イタリア製」ミニを手に入れました。 しかしそれからこのクルマには、わずか3ヶ月ほどしか乗りませんでした。 一番の理由は大学を卒業して25年暮らした九州から東京の会社に就職し、その寮の案内に 「寮に駐車場はないからクルマは持ってくるな」とあったことでしたが、何よりアシとして乗り回す にはあまりに程度が悪かったというのがありました。 雨漏りこそしませんでしたが、まずクラッチが滑っていて特に信号での発進があまりに遅かった こと(試乗したときには、こんなことにすら、気づかなかったのです。いかに浮かれていたかが 分かりますネ)、冷却ファンのないラジエターはちょっと渋滞にはまると水温計が上がって、渋滞 をUターンして引き返すことなどたびたび、ワイパーは実に弱々しく大雨のときには窓から手を 出して手で押してあげないといけなかったし、高速はメいっぱい踏んでも90kmしか出ず、さら に茶色の雨、と思ったらウォーターポンプが壊れたことによる冷却水の雨だったとか(しかも茶 色)・・・決定的だったのは助手席に友人を乗せたとき、 友人「助手席の床に石ころがあるけど」 ぼく「え?」 友人「取ってみるよ」 ぼく「うん」 友人「わー、地面が見えるぅ!」 それでもこの白いイタリア製ミニは短い期間でしたが、ぼくの良きパートナーでした。こんな酷い 程度の個体に乗ってですら、クイックなコーナーリングには感動しましたし、「機械を動かしている んだ」という感覚あふれ、さらにあのかわいらしい「まあるい」お目めには、つい微笑まざるを得ま せんでした。 ぼくは今でもあの短かったミニ体験を昨日のことのように思い出します。いつかまた、チャンスが あったらイタリア製左ハンドルのミニに乗ってみたい、と本気で思うのです。(ただし程度のよい 個体で、ね) ←prev next→ BACK TO ESSAY TITLE PAGE BACK TO HOME PAGE |