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Essay    Japanese only
                     File 008 : 33&1/3 / レコードで音楽を聴く        



レコードで音楽を聴く、と言ったら今や「アンタも好きだねぇ」ということになる時代かもしれません。

今や音楽のソフトとしてのフォーマットは完全にCDが主流となり、それはさらにMP3などの形態を

経て、そのうちにはダウンロードすることが当たり前の世の中になるのにそう時間はかからない

ような気もします。

ぼくが音楽に興味を持った小学生のころから、ビートルズに一番「いかれて」いた高校生までの

ころは完全にレコードが主流でした。ですから、ぼくはレコードというフォーマットから入った人間

であり、だからレコードのことをよく言う「おじさん」になってしまったのかもしれません。または、

今更1000枚ほどもあるレコードを処分するわけにもいかず、言い訳しているのかもしれません。

それでも敢えて言わせてもらえれば、レコードがよいと思う点はいくつかあります。

ひとつは音、です。これはCDというフォーマットが登場した時点から言われていることですが、レ

コードの方が「温かみのある音がする」などと言います。「音」というのも非常に概念的な部分が

あって必ずしも「分離のよい音がいい音」とか「数値で表現されるいい音が聞こえのよい音」という

わけではないようです。α波が脳から出る、などという難しいことは抜きにしても確かにレコード

の音には何かしら「心地よい」と感じさせるものがあるように思います。

それはレコードならどんなものでもする、あの「パチパチ」という音のせいかもしれません。ただ

いろいろと聴いてみると、単にレコードだからいい、というものでもないことにも気が付きました。

例えば、ビートルズの英国でのセカンドアルバム"With The Beatles"を1986年に初めて手に入れ

たとき、それはイギリスプレスの新品のレコードでした。ただ、そのときの感想は曲の良し悪しと

かよりもただただ「音が悪いな」というだけで終わってしまいました。実際に聞いたそのステレオプ

レスのレコードは音が悪かったのです。その後同じアルバムをCDで聴いてみて、あぁ、やっぱり

レコードでも音が悪いものはあるのだな、と思いました。しかし、2000年に英国を旅行したときに

手に入れた60年代のモノラルプレスのレコードを聞いたとき、正直言って鳥肌が立つほどでした

60年代にビートルズが持っていたパワーやあの頃の熱気が体験したことのないぼくにも伝わって

くるほど、その音はピュアで力強いものだったのです。それ以来、ぼくはビートルズを聴くならレコ

ードで、それも60年代のイギリスモノラルプレスだと信じています。それほど、これは強烈な体験

でした。今や「ビートルズとはロックなのか?」などという陳腐な議論はないのかもしれませんが、

「ビートルズってそんなにパワフル?」と思う方は、ぜひぜひどこかでチャンスを見つけて聞いて

みてください。

さて、レコードの話のつもりがビートルズの話になってしまいましたが、レコードのよい点はA面・

B面があることです。人はどれだけ長く音楽を聴いていられるのかわかりませんが、あのA面・B

面という区分けは、それぞれが20分から30分という、日常生活の中で音楽を聴くのに適度なブレ

イクを与えてくれると思います。

さらにフォーマットとしてのレコードがA面・B面と分かれていたことで、多くのレコードがこの区分

けを考慮した曲の配置を行っています。ビートルズやポール・マッカートニーのレコード時代の曲

は「アルバムを印象付けるA面の一曲目」「ひとまずさよならのA面の終わりの曲」「盤を入れ替え

て次の気分のスタートとしてのB面の一曲目」「終わりを印象付けるB面の終わりの曲」という構成

が多くのアルバムで見られました。CDになっても1曲目と終わりの曲は大事かもしれませんが、

それでもレコード時代ほどの重要さもなくなったように思いますし、ぼくにはCDは単に曲を羅列し

たもの、くらいにしか思えません。CD1枚の収録時間をMax74分程度としたのも、このレコードの

1枚の時間というのがあるように思えるのです。でなければ、1枚のアルバムが30時間もあるよう

なポール・マッカートニーのニューアルバムはあまり聴きたくはないですね。

音、とは関係ないけれどもレコード・ジャケット、というのもレコードの特長として挙げてよいと思い

ます。30cm角のレコード・ジャケットはちょっとした「キャンバス」であり、多くのアーティストが音と

は別にレコード・ジャケットで表現することを試みました。いろいろな仕掛けのあるジャケットもあり

ましたし、壁に飾っても「絵になる」のはやはりレコードジャケットの方で、プラケースに入ったCDの

ブックレットは、ぼくにはただの「取扱説明書」か「歌詞カード」くらいにしか思えないんですよね。

ですから、あなたもその気になったら、レコードいかがですか?ちなみに今でも新品のレコード・

プレーヤーと交換針は作られていますのでご心配なく。(2 Feb, 2004)



                      
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